のれんと色

　平安時代には存在していたと言われているのれんは、
風や雨、日差しを遮るという役割があり
主に庶民の家に架けられていました。

室町時代になると、これらの役割の他に
商店の経営者が店を宣伝する「店舗の顔」という
重大な役割も担うようになり、さまざまな意味を
込めるようになりました。

当時から、のれんの色の使い分けについては
業種によってある程度の約束事があり、
現在でもそれに従ってファサードを造っている
店が多い傾向にあるため、店に使用するのれんは
業種に合った色を選ぶことがポイントです。

紺や青ののれんは歴史的に最も古く、日本で長く愛されてきました。

呉服店や酒屋、蕎麦屋などに使われることが多く、
特に藍には虫の嫌がる香りがあって
虫除けの効果もあることから、呉服店は
ほとんどが藍を使う傾向にあります。

衣料店やファッション店なら青で検討すると良いでしょう。

白は菓子屋や薬屋での使用がおすすめです。
菓子に必要な砂糖が白いことがその理由で、
薬屋も江戸時代に砂糖を薬として扱っていたことや、
薬の持つイメージから、白ののれんを使用している
店が多くなっています。

茶を使用するならカフェや喫茶店はいかがでしょうか。

江戸時代に庶民が飲んでいたお茶は、緑茶では無く
番茶であったことや、同じ江戸時代に普及したたばこの葉が
茶色であったことから、当時お茶屋で多く使われていました。

しかし、時代の流れと共に徐々に意味合いも変化し、
現在では呉服屋や種苗関係の店舗にも多く使用されています。

赤茶系はもともと吉原や島原などの花街が発祥と言われており、
当時遊女の最高位であった「丈夫」を招くことができる
高級料亭だけに使用が許されていました。

しかし、その伝統も元禄のころには大分ゆるくなり、
一般の遊女屋でも使用されるようになりました。

現在では、当時の名残で高級料亭や割烹料理屋などの
飲食店に多く見られる色となっています。

なお、のれんに使用する文字は黒がおすすめです。
赤文字は注意を引くことができますが、赤字を連想させることから
使われないことが多いようです。

では黄色系のれんは？

のれんは屋外で使用されるものなので、多少の雨などの水分がかかってしまうことは少なくありません。

そこに使用されるのは主にフッ素樹脂撥水剤とシリコン樹脂系撥水剤という2通りの合成樹脂で、それぞれ水とは馴染みにくい性質を持っていながら、撥水方法が異なります。

シリコン樹脂系撥水剤を用いて布をコーティングすると、その表面に薄い膜が作られます。施した部分を拡大すると比較的フラットな表面をしていますが、シリコンは水を定着させないのですぐに剥がれ落ちてしまいます。

それに対してフッ素樹脂撥水剤は細かな凹凸のような間隔で水を付着させない仕組みを持っています。

素材そのものが撥水性を持っていながら、ピッタリと密着することがないので水が弾かれるという仕組みです。

シリコンと違い油に対しても強い性質がありますが、その分耐久性の面では劣ります。

強すぎる風などで摩擦が継続的に繰り返されると、剥離してしまう可能性が高まります。

これら2つの大きな違いは「対油性」と「耐久力」とわかりやすいです。

のれんに施す場合はこれらの特徴を踏まえた上で、使用する環境に合わせて選択すると良いでしょう。

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